白桜~伝説の名刀と恋の物語~【完】
しかし、今目の前にある光景はこれとは全く逆のものであった。
「失礼つかまつる。あなたは諏訪様領内の民でいらっしゃいますか?」
何度か常篤は通りかかる農民に話しかけたが、誰もが『おし』のようにだまって口を開かない。まるでかん口令でもしかれているかのようであった。
しかし、ここの農民たちの暮らし向きは、明らかに違っていた。そして、領民と話は出来なかったものの、はっきりと分かったことは、諏訪がこの領内ではあっぱれ名君として仰がれ、感謝と尊敬の念を持って民に受け入れられていることであった。
(・・・これは・・・)
常篤には疑問が多くあったが、しかし、この活気と実りを見せつけられ、さらにより多くの石高を持つ他の家老や要職にある藩士に比べ、逆に数倍におよぶ上納を行っているのだ。
『主らの政が甘いからこれしきの上納もできんのだ。藩の財政が苦しいときに藩を救わずして、何が藩士じゃ。』
などとピシャリと言われれば、誰も言い返す言葉もないであろう。
「失礼つかまつる。あなたは諏訪様領内の民でいらっしゃいますか?」
何度か常篤は通りかかる農民に話しかけたが、誰もが『おし』のようにだまって口を開かない。まるでかん口令でもしかれているかのようであった。
しかし、ここの農民たちの暮らし向きは、明らかに違っていた。そして、領民と話は出来なかったものの、はっきりと分かったことは、諏訪がこの領内ではあっぱれ名君として仰がれ、感謝と尊敬の念を持って民に受け入れられていることであった。
(・・・これは・・・)
常篤には疑問が多くあったが、しかし、この活気と実りを見せつけられ、さらにより多くの石高を持つ他の家老や要職にある藩士に比べ、逆に数倍におよぶ上納を行っているのだ。
『主らの政が甘いからこれしきの上納もできんのだ。藩の財政が苦しいときに藩を救わずして、何が藩士じゃ。』
などとピシャリと言われれば、誰も言い返す言葉もないであろう。