白桜~伝説の名刀と恋の物語~【完】
そんな彼女にとって、夫を亡くしてすぐにその嫁ぎ先を去り、帰郷することは、まさに不義不忠の行いでもあったはずである。それでも帰郷した紗枝のかたくなまでのその思いの正体が何であったのか。それは、はからずも『運命(さだめ)と縁(えにし)』という不思議なシステムによって、これからの紗枝にその解を導いていくのである。
紗枝がようやく降りしきる雪の中を帰郷した頃には、もう辺りはすっかり夜になっていた。久しぶりに見る懐かしい母親の笑顔が暖かく娘を迎えいれてくれた。
「紗枝おかえり。」
軽く抱き締める母親の体が小さく震えていた。
「ただいま…帰ってきてしまいました。」
紗枝がうつむいたまま答える。
(そう。帰ってきて『しまった』のだ・・・)
紗枝の心は何かしら後ろめたいもので責められて痛んだ。
「この雪の中で女の足では大変だったでしょう?」
「いえ…幼少より慣れておりますから。」
「すでに湯が沸いていますから、まずは体をあたためて…旅の疲れを癒してらっしゃい。話はそれからです。これからまたずっと…あなたは私達の娘になるのですから。」
紗枝がようやく降りしきる雪の中を帰郷した頃には、もう辺りはすっかり夜になっていた。久しぶりに見る懐かしい母親の笑顔が暖かく娘を迎えいれてくれた。
「紗枝おかえり。」
軽く抱き締める母親の体が小さく震えていた。
「ただいま…帰ってきてしまいました。」
紗枝がうつむいたまま答える。
(そう。帰ってきて『しまった』のだ・・・)
紗枝の心は何かしら後ろめたいもので責められて痛んだ。
「この雪の中で女の足では大変だったでしょう?」
「いえ…幼少より慣れておりますから。」
「すでに湯が沸いていますから、まずは体をあたためて…旅の疲れを癒してらっしゃい。話はそれからです。これからまたずっと…あなたは私達の娘になるのですから。」