白桜~伝説の名刀と恋の物語~【完】
「そこまでのお覚悟であれば・・・私も最後までお付き合いいたしましょう。」
「いやいや。そちはよい。そちには内々に隠滅してもらわねばならぬものが多くある。そちは生きてワシの恥じを消し続ける火消し役を勤めるのだ。」
「それでは、ひとつお聞きしますが・・・」
「なんじゃ」
「今回の賦役でかりだされた者は多くが各屋の男たちです。このほとんどが死ぬとなれば、残された家のものたちはどう処遇なさるおつもりで・・・」
「そちほどのものでもわからぬか?」
諏訪が意地の悪い口元の笑みでこれを返す。
「はい。私ごときには皆目見当もつきません。」
「売るのじゃ。」
「は?」
次郎が今夜だけで驚き、言葉を詰まらせたのはこれで何度目であろうか。
「まず、残された後家と娘のうち器量の良いものはすべて、江戸と京に売り飛ばす。遊女として、じゃ。売り飛ばした金も藩の財になる上に口減らしができる。」
ここまで、なにくわぬそぶりで酒を注いでいた紗枝の動きが止まる。
「なんじゃ?震えておるのか?」
「いえ・・・」
という紗枝の体はすでに真っ赤に高潮し、自分でも震えがとまらないのがはっきりと見て取れた。
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