白桜~伝説の名刀と恋の物語~【完】
「お主ほどの境遇にあるものでも、他のおなごの不遇には同情するか。」
「いえ・・・」
そんな紗枝の様子を舌なめずりして楽しんでいる頼重の趣向が次郎にもはっきりと感じ取れた。
(わざと紗枝にこの話を聞かせているのだ。)

こうやって、気の強い武家のおなごをいたぶるのがこの家老の唯一の『趣向』なのである。
「そしての。残ったおなごはムリにでも残った男どもと再縁させてしまうのじゃ。そして、親の居なくなった子を育てさせる。」
「これはまた途方もない・・・」
(無茶を・・・)
とまでいいかけて次郎は口をつぐんだ。

(なるほど途中まではわからぬこともないが・・・。夫やあるいは若い労働力を失った残されたものの心理のあたりからは、もうこの方の考えは及ばぬのだ。強制的に引っ付けたり引き剥がしたりするのは容易ではない。人の縁というものはそんなに簡単なものではない。)
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