白桜~伝説の名刀と恋の物語~【完】
ここに常篤の一抹の迷いと不安があったのである。
(迷いもまた剣の道)
と教えられはしたが・・・もはや悠長に考えにふける時間はなかった。こうしている間にも、何人もの人間が死んでいき、路頭にまよう子供も増えていく。この冬になればどれだけの犠牲がでることか。
そんな『私』と『公』のはざまで常篤が悩んでいた、とある日。
常篤がいつもどおり、領内を見回っているときのことである。
昼になって、腰を下ろした常篤が、握り飯を取り出したときである。常篤の領内の農民の子であろうか。
その常篤のようすをじっと見つめているのである。
「どうした。」
しかし、その子供はじっと見ているだけで返事もしない。
「このめしがほしいのか?」
子供は首を横にふる。それも首が千切れるかとおもわんばかりである。しかし、そこは子供である。腹が減っていることは歴然で、そのむすびをほしくてたまらないのは、子供のいない常篤でも『その目』でわかるのである。
「ほら。食うがよい。」
常篤はむすびを子供のほうにつきだした。
(迷いもまた剣の道)
と教えられはしたが・・・もはや悠長に考えにふける時間はなかった。こうしている間にも、何人もの人間が死んでいき、路頭にまよう子供も増えていく。この冬になればどれだけの犠牲がでることか。
そんな『私』と『公』のはざまで常篤が悩んでいた、とある日。
常篤がいつもどおり、領内を見回っているときのことである。
昼になって、腰を下ろした常篤が、握り飯を取り出したときである。常篤の領内の農民の子であろうか。
その常篤のようすをじっと見つめているのである。
「どうした。」
しかし、その子供はじっと見ているだけで返事もしない。
「このめしがほしいのか?」
子供は首を横にふる。それも首が千切れるかとおもわんばかりである。しかし、そこは子供である。腹が減っていることは歴然で、そのむすびをほしくてたまらないのは、子供のいない常篤でも『その目』でわかるのである。
「ほら。食うがよい。」
常篤はむすびを子供のほうにつきだした。