白桜~伝説の名刀と恋の物語~【完】
「そうか・・・。」
このような幼い子どもにとっては、立て続けに自らの兄弟が死んでいったのだ。並大抵の悲しみで済むはずもない。
「うん・・・。おかあは、それからずっと、兄ちゃんの分も働いてて。とうとう寝込んでしまったんだ。おいらは何もできないから。おいらが何かしようとすると、お前だけはどこにもいかないでそばにいておくれっていうんだ・・・。だから、おいら、こうやって、悪いやつをやっつけてくれる人が来るように祈ってるんだ。それしかないから・・・。」
子どもの視線の先には寂れたぼろぼろの地蔵があった。おそらくこの小さい手で毎日地蔵に手を合わせているのだろう。
「そうだな。本当に悪いヤツならきっとやっつけよう。それは約束する。」
常篤が涙をこらえながらそれに答えた。
そしてその子どもを見ると・・・その子もまた泣いていた。
「泣くな。」
「だって・・・。」
その子の頭をなでながら、常篤は
(このような民を守らずして何が武家だ!)
と声にならない自分の無力さへの怒りを抑えきれなくなってきていた。
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