白桜~伝説の名刀と恋の物語~【完】
この方法論は近代でいえば、第2次大戦中のアメリカ空軍などが非常に近い。航空機の開発は、いかに攻撃力をあげるか、という点よりも、『いかに人命(パイロット)を守るか』という点に力点をおいた開発が進められた。

結果、あまた有能なパイロットを失い、最終的に素人同然のパイロットを駆り出すことになって、作戦に大きな悪影響を及ぼした日本と比べ、アメリカは『人名を守る』ことによってパイロットの熟練による大きな戦果という、勝利に欠かせない結果を得ることができたのである。

この戦国時代。信玄ほど、人を愛し、人を守ろうとした武将は非常に稀である。収穫の時期にはいくら戦略的な価値があっても戦をやめ、農民とともに収穫を祝い、祭りではともに踊り呑んだといわれる信玄。

その彼のもっとも苦悩するところは、これからの時代において、彼の愛した民が飢え、苦しむことであった。そこで信玄公は、表向きの政治とは別に、その影でも後顧の憂いを絶つための策略を練ることにした。

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