白桜~伝説の名刀と恋の物語~【完】
このあとの松代藩の復興の早さと民の暮らしの改善はまさに当時の白桜継承者二代目武田成平によるところが大きい。

さらに、短時間でこの成平が情報を集め的確な計画に基づいてその重要な首のみを狙い、のちの藩内改革につながる膿を出す活躍できたのには、もうひとつの要素が不可欠であった。

これこそが武田の武田たる所以、『甲斐忍』の存在であったのである。当然、常篤のそばにも、すでにその『忍び』の末裔が控えていたのである。

常篤の時代にこの地にいたのは、代々頭領が『佐助』を名乗る甲斐忍であった。彼が真田十勇士の筆頭、猿飛佐助の血を引くものであったかどうかはいまだ明らかではないが、その志と忍びの術は、時代と共に廃れることなく、より磨かれつつ伝承されていたのである。

当代で十代目とされ、十代目佐助と名乗る男は今また、常篤の白桜と時を同じくして二百有余年の時を経て、再び世に出ようとしていた。
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