白桜~伝説の名刀と恋の物語~【完】
ふと目をあげると、常篤のまっすぐな瞳が目に映り、そのあまりの澄んだ色に、紗枝は思わずまた目を伏せた。
「紗枝殿・・・できれば、もっと早くお会いしたかった。」
「・・・はい。私もです。」
紗枝が思わず口にする。
そして、常篤の握った自分の手に気付いた。
それにハッとした紗枝は、その場を必死に取りつくろうように手を振り払い、丁寧に一礼すると、くるりと常篤に背を向けて走り出した。
そこに番頭が駆け寄ってくる。
「奥様!」
紗枝の後を番頭が追いかけていった。
(まるで娘のような初初しさよ・・・)
その後姿を見ながら、常篤は思った。
「もし・・・常篤様?」
また木陰から佐助の声がする。
「おお、すまなかった。どうした。佐助。」
「それでは・・・」
佐助が姿をあらわす。
「ここ数日・・・色々と調べて参りましたが・・・紗枝殿も諏訪に深くかかわっておりますようで。」
「福田屋と諏訪の間を取り持っていたと?」
「いえ・・・実は大変申し上げにくいことながら・・・」
「申せ。」
強い口調で常篤が言う。
「はい。実は、紗枝殿は・・・諏訪の情婦としてのお役目を強要されておるご様子。」
「情婦・・・それは・・・」
一瞬口に出して、常篤はそれ以上聞いても不快でしかないことに気付いて、口をつぐんだ。
「紗枝殿・・・できれば、もっと早くお会いしたかった。」
「・・・はい。私もです。」
紗枝が思わず口にする。
そして、常篤の握った自分の手に気付いた。
それにハッとした紗枝は、その場を必死に取りつくろうように手を振り払い、丁寧に一礼すると、くるりと常篤に背を向けて走り出した。
そこに番頭が駆け寄ってくる。
「奥様!」
紗枝の後を番頭が追いかけていった。
(まるで娘のような初初しさよ・・・)
その後姿を見ながら、常篤は思った。
「もし・・・常篤様?」
また木陰から佐助の声がする。
「おお、すまなかった。どうした。佐助。」
「それでは・・・」
佐助が姿をあらわす。
「ここ数日・・・色々と調べて参りましたが・・・紗枝殿も諏訪に深くかかわっておりますようで。」
「福田屋と諏訪の間を取り持っていたと?」
「いえ・・・実は大変申し上げにくいことながら・・・」
「申せ。」
強い口調で常篤が言う。
「はい。実は、紗枝殿は・・・諏訪の情婦としてのお役目を強要されておるご様子。」
「情婦・・・それは・・・」
一瞬口に出して、常篤はそれ以上聞いても不快でしかないことに気付いて、口をつぐんだ。