KEEP OUT!!
亮平は最後に天井を仰ぎ、大きく息を吸い込むと、八重ちゃんの瞳に向かって、
「────」
その言葉が何なのか、なんとなくわかった。
そして八重ちゃんはゆっくりと手を下ろし──こくんっ、と頷いた。
(……よかったね。亮平、八重ちゃん)
きゅっ、と。
胸元の服をつかみ、目を閉じる。
この瞬間から、わたしはもう二度と亮平のことを『カレ』と呼ぶことはなくなった。
いつもの『アイツ』に、なった。
でもそれは“戻った”んじゃなくて、新たに“変わった”のだ。
そして今はまだほんのちょっぴりほろ苦い響きに感じるけれど。
それもまたやがて、少しずつ色と風合いを変えていくのだろう。
うん。
目を開けると八重ちゃんは紙袋を亮平に渡していて、
「……ん~」
わたしは腕組みをすると、
「よしっ!」
ふたりの元に駆け出した。
だってね。
このままだとまた目の前でふたりのキスを見せられるはめになっちゃいそうだったから。
「お~い!」
そのくらいの“おじゃま虫”は、許されたっていいんじゃないかしらん?
ね。