KEEP OUT!!

「あいかわらず画面が黒いんだから」

 そんな悪態をつきつつも、口元を弛めてしまう自分がいる。

 あれだけ裏切りだなんだといっておきながら現金なものだ。

 でも、いつも通りに心配してくれたことが、いつも通りの文面で送ってきてくれたことが、嬉しかった。

「……っと」

 長い文にするとまた勢いで今はまだいわなくてもいいことを書いてしまいそうだったから、ひとこと「大丈夫だよ。ありがとう」とだけ打って返す。

 気付けばお腹の痛みもずいぶんとやわらいでいて、さっきまでは少し肌寒さすら感じていた雨音もどこかやさしい音色に聴こえた。

「ふ、わぁ……」

 大きなあくびひとつ。

 ぽすんっ、とベッドに倒れこむとすぐに眠気に包まれ始める。

 少し眠ろう。

 起きたら八重ちゃんにメールしよう。

 うん。

 今はちょっとだけ、このやさしい気持ちに浸ろう。

 この苦しみを、痛みのせいにして。

 もしかすると目が覚めればすべてがきれいさっぱり“気のせい”になってるかもしれない。

 なんて。

 そんなことがありえないことは、亮平からのメールに心から安心したとき気付いてしまった。

 今更もうこの気持ちが帰る場所はどこにも、ない。

 行き着くところまで行かなきゃならない。

 そのためには、しっかりと身体を休めなきゃ。

 まぁ、コレばっかりは一眠りしただけじゃどうにもならないんだけど、ね。

 気の持ちよう。

 あ、いや、心構えっていうんだっけ?

 それとも──覚悟?

 大した違いは、ないの、かも、ね……




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