本庁
んだな?」


「……」


「何とか言ってくれよ」


 すると美和子が、


「山さんの推理は当たってるわ。確かにあたしは一面識もない吉田や国谷を使って、事件を扇動したわよ。それにピーズファイルを持ってるの。ここにね」


 と言って、自分の胸ポケットに入れていたフラッシュメモリを指で指し示した。


「君はそのピーズファイルに警察官僚が横流ししたり、不正にプールしたりした裏金の一覧が載ってることを知ってるんだろ?」


「ええ。それと同時に、父建作を爆死に追いやった当時の新宿中央署の管理官の工藤章の不祥事も載ってるわ。工藤は察庁からの出向組で、今本庁にいるの。あたしがこれをブン屋か雑誌屋にでも渡せば、工藤は過去に犯した罪で逮捕されるわ。容疑は国家公務員による背任(はいにん)容疑よ。工藤が過去に赤坂の料亭で小切手で一億受け取ったっていう事実も載ってるし、組織に無用な金を使わせた背任の罪に問われることも分かってるの」


 ピーズファイルを通じてもう一人の悪玉が登場しつつあった。


 それは工藤章という警察官僚である。
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