本庁
 警察は一つのヤマを追うだけでなく、常に複数のヤマを追い続けている。


 おまけに刑事課と言えば、荒くれが集まる場所だ。


 普通刑事になった場合、通常の警察署勤務を希望する人間が圧倒して多いのだが、中にはアンラッキーな人間もいる。


 キソウや公安など、地味な場所で仕事をさせられる刑事もいて、内情は複雑なのだ。


 特に公安警察は難しい場所である。


 最近――ここ数日前だが――、芝浦ふ頭で、北朝鮮に出国する船に合成麻薬や向精神薬などの違法ドラッグ、それに不正送金するためか、荷物の中に札束が大量に隠されている事件が起こった。


 公安のチーフである警部の那珂川がそれを取り締まり、在日朝鮮人と思われる男性数名を現行犯逮捕したばかりなのだ。


 どの新聞にもそれが取り上げられた。


 北朝鮮への経済制裁が発動されようとしている時期に起こったのだから、尚更難しい。


 その犯人たちに対する取調べはまだ続いている。


 拘留期間を最大の十日間に延長して、だ。

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