本庁
とで、吉田がホシであることを暗示したかったはずだ。


 それに、現段階で新宿区内に潜伏しているかもしれない吉田の存在は警察サイドにとって、やや不気味に映る。


 なぜ、犯行現場から一歩でも遠い場所へと離れていかないのか?


 よほど強い執着がない限り、吉田は新宿にい続ける理由がない。


 警察の手がすでに区内に満遍(まんべん)なく及んでいるからである。


 そして運転席の山口も、助手席にいる安川も車の中で思いを巡らし続けていた。


 車がちょうど豊島区に入った辺りで、池袋南署から無線機に連絡が入る。


「こちら、池袋南署。ただ今、管轄区内に怪しいワゴンが一台進入。検問中」


 ――了解。


 どうやら池袋南署のデカは、山口たち新宿中央署の刑事だけでなく、東京都内にある全所轄署の警察官に連絡を入れたらしい。


 山口の勘が当たれば、ワゴンに乗っている人間が今回の高城和哉氏殺害のマル被ということになる。


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