本庁
第5章
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「逃走車両も捕らえてしまったことですし、ひとまずこの署で、今回の北新宿の殺しのヤマに関して我々だけで話し合いをしましょう」


 山口が吹かした、まだ吸い差しのピースをテーブルの上の灰皿で揉み消し、ゆっくりと息をつく。


「それは出来ないな」


 阿部が端的にそう言った。


「なぜです?殺人事件があれば、捜査をするのが警官の仕事なんじゃないですか?」


 山口はいきり立ちながらもそう言い、興奮を鎮めようとする。


「君は今回のヤマを捜査するだけじゃなくて、河東元巡査部長の作ったピーズファイルに関しても精査したいんだろ?」


「ええ」


「私はね、この署の管理官だが、実は察庁からの出向組でね。下手に警察内部の事情を暴かれたりすると、自分の身が危ないんだな」


「それは、警察内部で駆け引きがあることを仰りたいんですね?」



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