本庁
「ああ。あのファイルは極秘文書だ。絶対に曝してはいかん。中には警察内部で動いた裏金の記録が克明に記録されている。あれがもし世間に公表でもされれば、警察の信用はがた落ちだからな」


 阿部の目付きが一転して真剣なそれへと移る。


 あのファイルだけは是が非でも譲れないということらしい。


 そして河東のことや、河東と関わった人間たちのことも触れたくないようだ。


 ただ、くぐもってしまった、まるで光のない阿部の目に対し、全く曇りのない山口の目は確かに事件を追いかけたいという気迫に満ちている。


 安川も山口と同意見のようだった。


 阿部はまるでバカにしきったように、


「君たちだって出世したいだろ?これからまだ警察官生活が続くわけだし」


 と言い、ヘヘヘと笑う。


 管理官じゃなかったら一発ぐらい殴っていただろうと山口は思ったが、手が出ないし、出せない。


 出したら即首だからだ。

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