本庁
 辺り一帯はすでに警察の車両で埋め尽くされていた。


 新宿中央署だけでなく、近辺の所轄の夜勤の警官たちが出動してきて、辺りが騒然となっている。


 遅れて、本庁の刑事たちが回転灯を灯した覆面パトカーに乗ってやってきた。


 山口がコーヒーを安川に手渡すと、安川が受け取り、プルトップを捻り開けて、グビグビと飲み始める。
 

 この暑さだからか、相当喉が乾いていたらしい。


 安川は一気に丸々一缶飲み干してしまった。


 山口は夜勤が専門の警官だ。


 年齢は働き盛りの四十代を超えていて、もうそろそろ五十に手が届くところだ。


 この年になればいい加減、夜の勤務にも疲れを覚え始める頃なのだが、なぜかしら山口は大都会新宿の夜が好きだった。


 あちらこちらでネオンが灯り、人や車が絶えず行き来していて、犯罪の臭いがプンプンしているからである。


 長年、そんな経験ばかりし続けてきた。

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