本庁
 と山口が言った。


「ああ」


「コーヒー飲む?」


「あ、いつもごめんね」


「いいよ、いいよ。これから署に戻るから、ゆっくりと頭冷やしにな」


「山さんも帰りの運転疲れると思うから、お互いゆっくりね」


「ああ。事も事だし、そうも言ってられないんだけどな」


「分かってるよ」


 安川がそう言い、山口に代わって、近くの自販機でコーヒーを二缶買い、そのうちの一つを山口に差し出した。


「ああ、すまんね」


 山口がそう言い、プルトップを捻り開けて、真っ黒なブラックコーヒーを喉奥へと流し込む。


 そして言った。


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