本庁
第6章
     6
 その夜、新宿区内にある自宅マンションに帰り着いた山口は、疲れていたからだろう、部屋に帰り早々、シャワーを浴びてからすぐに眠ってしまった。


 独身の山口には実は離婚歴がある。


 以前結婚していた妻の百合香は山口が毎朝早い時間帯に出勤して、夜中帰ってくる生活を続けていたので、愛想を尽かして、娘の彩と一緒に家を出てしまったのだ。


 親権は自分の方が取って、彩を連れ、出ていった。


 元々百合香も新宿中央署の婦警で、署内の交通課に勤務していた。


 交通課の女性職員は大概、三十を前にすると、結婚して退庁していく。


 山口と百合香は情熱的な恋愛の末結ばれたのだが、互いに結婚生活に飽き始めたからだろう、離婚という結末で別れてしまった。


 ベッドに寝転がって、蒸し暑い夜だからか、窓を開け放ったまま朝を迎える。


 起きてすぐにアイスコーヒーを一杯淹れた。


 何も買っていなかったので、朝食は近くにある定食屋で済ませるか、もしくはコンビニでおにぎりかパンなどを買おうかなとも思っていた。

< 34 / 110 >

この作品をシェア

pagetop