本庁
 吉田が高城氏を殺すだけの動機が……。


 公安のチーフである那珂川は、すでに自分たちの部局にいる大量の捜査員を動員して、鋭意捜査を進めているらしい。


 キソウや公安などに所属する刑事たちの活躍が新聞には一通り載っても、裏までは決して書かれない。


 彼らは警察で言えば裏の顔、いわば闇世界においてホシを追い続けているのだから……。


 山口は地下鉄に揺られながら、まだ四十ちょっとなのにだいぶ白髪が混じった那珂川の顔を思い出す。


 日々苦労しているのだろうなと思われた。


 山口は今日にも那珂川と会う。


「お疲れさん」と一言労(ねぎら)ってやりたかった。


 それが同じ警察官としては当然の行為なのである。


 単に勤めている部局が違うというだけで……。


 そして山口は河東勇太郎が作ったピーズファイルをどうしても見つけたかった。


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