本庁
 山口はデータベースに載っていた吉田たちの生活を見ながら、そう思っていた。


 吉田を殺人及び殺人教唆容疑で逮捕して事情を聴けば、おそらくこの事件の捜査も終結することだろう。


 いつの間にか、コーヒーが淹れてあった。


 婦警が淹れてくれていたらしい。


 マグカップに入ったアイスコーヒーに一口口を付けると、神経が覚醒する。


「山さん」


「何だい?」


 安川が声を掛けてきたので、山口が訊き返す。


「これ全然別ルートの話なんだけど、実は吉田の愛人の国谷に麻取が付いてるらしいんだ」


「麻取って、俺たち刑事課とは別部署だろ?」


「ああ。何でも国谷は五年前に一度、新宿区内で乾燥大麻所持の現行犯で逮捕されて、警察のご厄介になってるんだよ。それで再犯の恐れがあるってことで、麻取がもう一回見張り始めたらしい」
 
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