本庁
「そうなんだ」


 山口が頷くと、安川も淹れてもらっていたアイスコーヒーを啜りながら、ゆっくりと息をつく。


「多分、あの高城和哉さん殺害事件のとき、致命傷を負わせたのは吉田だろうと思うよ。だから、ああやって毛髪を握り締めたまま高城さんは息絶えたんだ。唯一のダイイングメッセージだったと思う」


 安川がそう言うと、山口が、


「紳ちゃんはかなり調べ上げてるんだろ?」


 と訊く。


「ああ。すでに吉田が潜伏してるって思われる新宿区内を徹底して捜査してもらうよう、区内の所轄署に手配してるから」


「用意がいいな」


「うん。まあ、俺は俺なりに出来ることがあるからな。それをしてあげてるだけだよ」


「いつもすまんね」


「別にそんなこと一々断らなくてもいいよ。だって、一緒にこの署の水を飲み続けてから
< 44 / 110 >

この作品をシェア

pagetop