本庁
 と言った。


 九十億円もの金が警察内部で不正流用されていたことを知らせるために、河東勇太郎はあえて警察官人生を投げ打ったようなものだから、山口も安川もこのヤマだけは絶対に暴かなければと思っていた。


 そのとき不意に、新宿中央署内の全フロアに緊急入電があった。


 プロファイラーの佐田美和子が大きなトーンで、


「ただ今、本庁からの要請で、我々新宿中央署刑事課フロア内に高城和哉氏殺害事件に関して、緊急捜査本部を設置する旨打診あり。繰り返す。……」


 と入電された。
 

 同じことを二度復唱し終わってからすぐに、本店と仇名される警視庁からデカがやってきた。


 公用車で署に到着したのは、警視庁捜査一課長の村山警視正で、上下ともパリッとしたスーツに身を包んでいる。


 村山は背後に数名の部下を引き連れながら、堂々と署内へ入ってきた。


「君が山口猛君か?」

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