本庁
「ええ。検視官の二見さんが臨場してますから、詳しいことは二見さんの方から」


「分かった。二見君を待たせておけ」


 山口がそう言い、新宿中央署に所属する検視官の二見を待たせ続けた。


 安川が、


「山さん、どうして二見さんを待たせるの?」


 と訊いてきたので、山口が、


「俺は遺体を検分する前に、この近辺の様子を調べたいって思ってる。おそらく何かとんでもない秘密が眠ってるはずだ」


 と言って、缶コーヒーを飲み干し、空き缶を投げ捨てた。


 カランカランカラン……。


 空き缶が新宿の道路上で転がる。


 そしてそれから三十分ほど、緊配(きんぱい)――いわゆる緊急配備というやつだが――が掛かった道路の各方面を精査し続けた。


 ホシが仮に車を持っているとすれば、逃走経路はおそらく北新宿を越えて、山の手線沿

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