本庁
 そう思っているうちに、山口が立ち止まって、


「ちょっと待ってくれよ」


 と言い、パトカーを停めて、ケータイを取り出す。


 十一桁の番号を押すと、右耳に押し当てた。


「はい、中嶋」


 ――おう、俺だ。新宿中央署の山口だよ。


「ああ、山口さん。お久しぶりです。どうなさったんですか?ケータイに掛けてこられるなんて」


 ――実はね、君に頼みがあって電話したんだよ。


 山口と電話先で応答しているのは、察庁からの出向組で、今本庁のセキュリティーセンターで主任をしている椛田利夫だった。
 

 椛田は実は山口とは知り合いなのだ。


 たまたま都内に在籍している警察官が集まる立食パーティーで知り合った。


 確か今、警部補のはずである。
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