本庁
 言わずもがなのキャリア組で、まだ年は三十前後だ。
 

 山口は作られたようなエリートにものを頼むことを嫌っていたのだが、現時点でピーズファイルをコンピューターからCDなどの記録媒体に残せるのは、椛田だけだと思っていた。


 その旨伝えると、電話先から、


「了解です。探ってみます」


 という答えが返ってきた。


 山口は薄々勘付いていた。


 六本木の殺しのヤマがおそらくピーズファイルに絡んでるんじゃないかと。


 あの警察の裏金の一覧が載ったファイルは、コンピューター同士を介して、どこかしらで不正入手され、それが手に渡れば殺害の対象となるまで重要な類のものかもしれない。


 そのとき無線機が鳴った。


「マル害の身元が割れた。元警察官の大伴(おおとも)良三だ」


“もしかして今回のヤマは警察内部での犯行かもしれない”

< 53 / 110 >

この作品をシェア

pagetop