本庁
線を池袋辺りまで行ったと思われる。


 そのとき、二見がやってきて、


「山口警部補」


 と声を掛けてきた。


「何?」


「検視の結果、害者の右手に毛髪が握られているのが分かりました」


「毛髪?……男性のもの?それとも女性の?」


「長さからして多分男性のものです」


「後で鑑識に回して」


 山口はホシは男性だと踏んでいた。


 あの刺し傷と、鈍器による殴打は非力な女性では到底無理だと思われたからである。


 そして山口と安川はその夜、午前二時過ぎまで現場にいた。


 マル害の握った毛髪はホシを暗示する、いわばダイイングメッセージだったのだろうか

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