本庁
 もしかしたら、本松は吉田によって操られているのかもしれない。


 そう思っていると、安川が、


「山さん、ここは東山巡査部長にお任せしていったん戻ろうよ」


 と言った。


「ああ」


 山口が端的に頷いて、停めてあったパトカーへと向かう。


 安川が続いた。


 山口の口からはニコチンのにおいがしてくる。


 ヘビースモーカーなので、合間にガムを噛んでも口臭が収まらないのだ。


 山口がドアロックを解除し、安川が助手席に滑り込んで、車を出す。


 あまりにも暑いので、胃や十二指腸の調子が悪く、吐き気がしていた。


 だが、さすがに路上で吐いてしまうとみっともないので、山口も安川もじっと我慢する。


「美和子がホシだったとして、そこまでするかな?」
< 69 / 110 >

この作品をシェア

pagetop