本庁
させたことだった。


 当時、美和子はまだ女子大生で、一人娘だったので警察庁に入庁する予定はなかったのだ。
 

 ただ、どうやら美和子の思惑や入庁目的は自分の大切な父親を見殺しにした警察上層部に対し、復讐することだったのかもしれない。


 それにピーズファイルに書き込んであることを知っているのは当時の警察幹部、河東、それに美和子である可能性が高い。


 つまり美和子は用意周到にあのファイルに記載されている警察の裏金の実態と、警察内部で巻き起こった不祥事の二つを知っているものと思われた。


「やっちゃんか椛田が俺のパソコンにあのファイルをメールで送ってくる可能性が高い。早めに署に戻らないと」


 運転席の山口がそう言い、筧か椛田のいずれかが全ての秘密が隠されている極秘ファイルを送ってきて、それで今回の一連の事件全てが解決に向かうものと考える。


「紳ちゃん、急ごうよ。君も河東さんが自分自身の警察官人生を掛けて守り抜こうとしたあのファイルの存在を知りたいだろ?」


「ああ。一体、裏金の事実だけじゃなくて、どんなことが記されているか、知りたいね」

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