本庁
中、在日の朝鮮人から故国に不正送金が繰り返されることで、国家間の関係がきしみ始めていた。


 そこで那珂川たち公安の人間たちの活動が活発になってくる。


 違法送金だけは何としてでも取り締まらなければならないからだ。


 これは極自然なことだった。


 そして那珂川たち公安のデカの仕事が増えていくほど、日本も北朝鮮に対し、あらゆる制裁発動がしやすくなりつつある。


 本来なら公安は陰のような存在なので、表には出てこない。


 それに那珂川も入庁当時、配属先がキソウと公安になることだけは、極力避けていたようだった。


 ところがその一番嫌な部署へと配属され、警官をやっている。


 警察がトップダウン方式である以上、上からの命令には逆らえない。


 スーツを着ていた那珂川が、山口に、


「積荷に札束が隠されてる事件が絶えませんからね」

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