本庁
愛人の吉田栄輔も逮捕するつもりでいた。


 どうやら両者は共犯関係にあったらしい。


 河東とほぼ同期で、当時の警察内部の裏事情を知っている人間が何かと邪魔なのを知って。


 そして新宿中央署では驚くべき事態が巻き起こっていた。


 いったんトイレ休憩に立った美和子が、フロアに帰ってきて、注がれていたコーヒーを啜った瞬間、喀血(かっけつ)したというのだ。


 それは何より、警察内部に今回の一連の事件に関して、黒幕と思われる人間がいることを容易に想起させた。


 美和子は危うく口を封じられかけていたのだ。


 一連のヤマの裏を知る人間の一人として……。


 飲んだコーヒーの飲み残しには高濃度の青酸カリが入っていたと、鑑識から山口たちに連絡があった。


 実に薄汚いヤツがいるものである。


 まるで掌でボールでも転がすようにして、巻き起こる事態を弄(もてあそ)ぶかのような……。
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