本庁
 肝心のところでだんまりを決め込む。


 本松は実に汚いのだが、現時点でこの人間を追及することでしか、事件の突破口は見出せない。


 そして本松はとうとう観念したのか、


「実は私に大伴さん殺害を頼んできたのは、警察庁にいる林田警視監だったんです。あのファイルを作るのを手伝ったヤツを殺せと」


 と言った。


 キャリア組で入庁していた林田郁夫は次期警視総監候補と見られていて、警察内部において言いようのない権力を持っている。


 その男が、大伴を殺害しろと教唆したらしい。


 本松の供述を聞きながら、堤は考えていた。


“もしかしたら、新宿中央署のプロファイラーの殺害未遂も誰かの仕業かも”


 堤は聞いて知っていた。


 犯罪心理分析官の佐田美和子の飲んだコーヒーに毒が入れられていたことを。
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