本庁
 当時、同僚プロファイラーと一緒にいたと美和子は、誰かから命を付け狙われていたのか……?


 事件のあった時間帯に、美和子のコーヒーカップに青酸カリを入れることが出来たのは、同じプロファイラーの吉本和恵、井伊凌子(りょうこ)の二人だけである。


 だが、和恵にも凌子にも肝心の動機がない。


 単に同じ業務を担当するプロファイラーというだけである。


 極端な話、山口は事件を聞きつけて、こうも考えていた。


「毒入りコーヒーの一件は美和子が自分でやった、一種の狂言なんじゃないか」と


 美和子は一応警官なので、青酸カリなどの毒物に関しても知識があるはずだ。


 致死量飲まずとも、加減して飲めば死には至らないケースがあることも熟知していると思われた。


 だが、なぜ自分が毒の含まれたコーヒーを狂言で飲まなければならなかったのか……?


 それは父親で、殉職した佐田建作への想いがあり、まるで執念のように警察に対し復讐しようと目論んでいたからではないのか……?


 そういった想いがあるからこそ、美和子にとってフェアプレイは通用しなかったのだ。
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