本庁
 同じことを復唱した後、和恵が入電し終えた。
 

 そして、いよいよ山口や安川たちと、事件を背後から操り続けた美和子の対決が始まろうとしていた。


 これはかなりの緊張を要する戦いなのだが、山口たちは正々堂々挑む気でいる。


 ピーズファイルは何かを示していた。


 まるで暗示のように、あのファイルには何かが隠されているはずだ。


 世間に公表されるとまずく、警察の威信を失墜させんばかりの何かが……。


 逃亡中の美和子はピーズファイルのコピーだけをフラッシュメモリに落とし、自分のパソコンを初期化して他のデータを全て消してから逃亡を図ったらしい。


 和恵の入電では逃亡先までは分からなかったのだが、どうやら美和子は神奈川県の江ノ島の海に行っているようだった。


 不意に山口は思った。


「江ノ島って言ったら、佐田建作の葬儀が終わった後、親族皆が集まって、別れの儀式をした場所なんじゃないか」と。


 道理で美和子が逃亡するには打ってつけの場所だ。
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