桐壷~源氏物語~
「やはりね」
報告を受けた弘徽殿女御(こきでんのにょうご)は、怒りで顔を赤くした。
「桐壺の、身分は更衣ですって?そんな身分の者を主上は…」
ここの所、主上は考え事をしているか、心なしか嬉しそうにうきうきしているような所があった。
やはり、若い女官に懸想(けそう)していたのだ。
しかも自分よりもよっぽど身分の低い女、たかが更衣ふぜいに。
どのような女なのだろう。
顔は?
姿かたちは?
帝との間に皇子までいる私をおいて、更衣ふぜいに追い越されたかと思うと、悔しくて堪らない。
「覚えておいで」
怒りに満ちた声でそう口にした弘徽殿女御に、周りに居た者達はぞっとした恐ろしさを感じていたのだった。