桐壷~源氏物語~
「本日から、此方でお世話になります。宜しくお見知りおき下さいませ」
床にゆっくりと手をつき、深くお辞儀をする。
顔を上げると、年上の更衣や女房達は互いに目配せをし合い、くすくすと小さな笑い声を洩らしていた。
美しい方々ばかり。
私は今日からここで、日々生活していくのだ…。
退出する際、じっとねめつける様な視線を幾つも感じた。
今まで、こんなに大勢の見知らぬ人に囲まれる経験をしたことが無かった私は、緊張で汗ばむのを感じながら、やっとの事でその場を離れたのだった。