桐壷~源氏物語~
「御覧になって?今の方」
「若くて美しいだけよ。私達と張り合おうなんて、これっぽっちも思っていないでしょうよ」
「確かに、気が小さそうね」
そう言うと、皆が扇で口元を隠しながら笑う。
「大納言の娘といえども、今は表立った後見も無し。放っておいたら良いわよ」
そう言ってしきりに笑い合う。
だが、更衣や女房達は内心、気が気でないのだった。
匂いそむる花の様に可憐で美しく、気品に溢れた若い桐壺更衣。
他の更衣や女房の気を逆撫でするには、充分過ぎる器量だった。
だが、当の本人は、ちっともそんな事には気が付いていないのだった。