准教授 高野先生の個人授業
3歳からピアノを習っていて、中学高校は合唱部だったという僕の彼女。
彼女自身はソプラノに憧れているようだけど、僕は彼女のアルトな声が大好きだ。
“かえるのうた”は短すぎてあっという間に終わってしまった。
そりゃあまあ、輪唱とはいえ二人きりでは当たり前、か。
だけど、短いくらいでちょうどいいのだ。
“靴下”を履くのは、落ち着いてやればそれほど手間のかかる作業じゃない。
手間取るとすれば、相手に気づかれないように隠れて手早く済ませようと焦るからだ。
学生時代つきあっていた彼女は、ムード重視でスマートな振る舞いを僕に求めた。
つきあい始めたばかりの頃は色々うまくいかなくて、よく気まずい空気になったっけ。
カッコつけなきゃと頑張っていた若い頃の青く情けないほろ苦い思い出。
もしも、昔の僕が今の僕に会ったなら、さぞや驚くことだろう。
女の子との夜を、こんなにも素のままで、ゆったり寛いですごしているなんて。