准教授 高野先生の個人授業

先生は、よっこらしょっとベッドを抜け出して“何か”を取りに行った

私はおとなしくベッドの中で待っていたけど、耳を澄ますと何やら向こうで、

レジ袋の軽いカサカサという音や、紙袋の重いガザガザという音が聞こえた

そうして、先生は小さな箱を持って戻ってきた

「ちゃんと“靴下”履くからね」

「“靴下”???」

「そう、“靴下”」

その箱はもちろん、“通勤快足”を入れるには、あまりに小さな箱だった

「詩織ちゃんは、つけてするのと、つけないでするのの違いって想像つく?」

「ええっ」

「なんて、無理だよね」

先生は、箱を開けながらくすりと笑った

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