ほどよい愛
高校三年の時、進路を決める事ができずにいた私と兄の透。
亡くなった両親も受賞した事のある【設計デザインコンクール】の受賞式を見学しないか?と協会の人から声がかかり、透と見に行った。
そして。
二人の人生は動き出した。
『未来』
とタイトルのついた大賞の作品には、母がよく言っていた螺旋階段や壁面いっぱいのガラス窓。私が結婚する時には設計してくれると話してくれていた夢の家そのもので。
気付けば私と透は声もなく涙を流して作品に見入っていた。
受賞式で壇上に立つ晴れやかな笑顔の男性。
その人が『未来』を形にした人。
私が相模恭汰を初めて知ったのは、この瞬間だった。