ほどよい愛
「相模課長、外構の図面はこれなんですけど、この5棟分確認してもらっていいですか?」

「…あぁ、わかった」

図面を受け取り、現場との確認をする。

隣りの区画で建築会社の人間と打ち合わせに走る花田聡の後ろ姿を見ながら苦笑いが浮かぶ。

ここ最近、仕事中も葵の事を考えている自分に気付き、ここ数年…可奈と別れてからずっと距離を置いてきた感情に向き合うようになった。

いつか離れていくなら愛する人は必要ない。
一瞬で壊れてしまう幸せを信じて生きる強さからは目をそらして。

そうして生きてきた。

< 107 / 302 >

この作品をシェア

pagetop