ほどよい愛
一気に話す結衣に圧倒されて、イライラした気持ちも急に冷めていく。

「…俺は、忘れたくない過去だけどな」

可奈と別れる前から気付いていた結衣の俺に対する愛情を利用して…。

酔っ払った勢いで結衣の部屋に押しかけて抱こうとした夜。

今でもはっきり浮かぶ結衣の悲しい笑顔は、俺の人生を正しい方向へと戻してくれた。

もしも、あの時結衣が俺を愛してなければ…

無理矢理にでも抱いていた。
きっと。

そして、後悔していたはず。

きっと。
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