ほどよい愛
恭汰は私の顎に手を入れてお互いの視線を合わせると。

「…俺も、葵の兄貴みたいな性格が羨ましいよ」

「…」

「迷いはあるはずだけど、自分の生き方を羨ましいと思わせる生き方が羨ましい」

「恭汰の事羨ましいってみんな思ってるよ」

驚いて言う私をしばらく見つめていたけれど、ふと瞳が揺れて。

「そんな大した人生を送ってるわけじゃないさ」

「…」

「さ、晩飯にするか。…疲れたから外で食べずにまっすぐに帰って来て良かったな」

明るく言うと、見つめられる瞳に光も戻り、深いキスを落とされた。

「葵…」

疲れているのか少し気弱な恭汰が愛しくて、私も深く想いをこめてキスを返した。

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