ほどよい愛
「葵に合うと思って買ってたんだよ」

今までにない慌てた口調で話す恭汰は心なしか焦っていて。

「サイズも合うだろ」

手渡された服は…麻のワンピースと7分丈のジャケットのスーツでサイズも私に合いそう。

「…いつ…?いつから用意してあったの?」

「…それは今年の春かな」

恭汰の視線を追うと、女性用としか思えない服がいくつか吊ってある…。

冬物。夏物。

「…」

クローゼットに近づいて驚いている私の背後に立ち、抱き締めてくる恭汰は、耳元に小さな声で、

「他に、帰りたい理由ある…?」

「え?」

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