ほどよい愛
シャワーを浴びている間にインナーは洗って乾燥機で乾かした。
そして、恭汰が用意してくれていたベージュのスーツを着た。
ぴったりのサイズが少し恥ずかしい。
手早く用意したコーヒーとトーストを食べていると
「結衣に、あの模型の思い出聞いたんだろ?」
「はっ?」
何の不安も感じる事なく二人で朝食をとる幸せを感じてぼんやりしていた私は、あっという間に現実に戻ってきた。
「…模型…?」
「そう。葵が大好きな『未来』」
「うん…。恋人のために作ったって」
「まぁ、まるっきりの間違いじゃないんだけどな。当時はそういう気持ちもこめて作ったし。だけど、あの模型は、俺の人生の方向を教えてくれた人のためにも作ったんだ」
淡々と話す恭汰は、過去を拾い集めるような遠い目をしていた。
その意味が全くわからない…。