ほどよい愛
恭汰は私の部屋の鍵をシャツのポケットにしまうと

「…会社も近いし、俺の部屋に来ないか?もし、まだ不安があるならこの部屋残しておいてもいいし…」

「……」

「葵が楽に暮らせるようにしてくれていいから」

「楽に…?」

「ああ。葵が抱えてきた不安をすぐに全部クリアにはできないだろ?逃げ道としてこの部屋を残しておきたければ、このままでいいぞ。」

淡々と話す恭汰は心から私に気遣ってそう言ってくれている。
甘くて優しい瞳は私の反応を伺いながら揺れていて、私が逃げたりしないように話している。

でも…。

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