ほどよい愛
「こないだは喜んでたじゃない」

そう。恭汰が透に偶然会って挨拶してくれた日。

「…そりゃあ、相模さんに会って嬉しくないわけないだろ。建築やってる人間ならな」

ふんと視線をそらすと、ちいちゃんの肩を急に抱き寄せた。

「千尋と、葵が寂しがるから結婚の話は慎重に報告しようって相談してたのにな。お前はとっくに幸せ見つけてたんだよな」

「……」

「あ、葵ちゃん気にしないでね。いちいち兄貴に恋愛の話なんてしないよね~」

「……」

間をとりなすちいちゃんは、のほほんと笑って透に抱きついていた。

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