ほどよい愛
②
「なんだ?この荷物は…」
家に着き玄関のドアを開けた途端目に入るスーツケース。
自分の家だよな…。
表札を確かめて、再び玄関に足を踏み入れる。
「……!」
もしかしたら。
スーツケースをよけながら部屋に入ると、ソファに丸くなって眠っている葵。
あの荷物持って、何しに来たんだ?
今週はずっと市橋夫妻の家に行くはずだろ?
眠る葵の側に腰を降ろして、その寝顔を見ると、今日の社長の思いつきに振り回された疲れがほぐれていく。
額にかかる髪をそっと指で後ろになで付けると、首筋に咲いている花が目につく。
思っていたより目立つ花を指でなぞっても葵は眠ったまま。