ほどよい愛
あまりにも予想外の言葉が続いて、呆然と見つめるしかできないでいると

「俺と結婚しろ」

低くはっきりとした声で言い切る恭汰は、優しく笑い私の頭を撫でてくれた。

「葵が側にいないと、俺は幸せになれない。
ずっと一緒だっていう紙切れ一枚の誓いがたまらなく欲しいんだ」

「…恭汰ぁ…」

思わず抱きつく私を強く強くその胸に閉じ込めると、体を震わせて大きく息を吐いた。

「…長かった…」

思わず出てしまったに違いないその言葉に、静かに頬を温かい涙が落ちた。

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