ほどよい愛
別に謝るべきじゃないんだけど、残念そうにしている姿を見て思わず言ってしまった。

「…はは。別に仁科が謝らなくてもいいし。…ただ、大賞取れたら人生を一区切りつけられるって頑張ってたから」

「一区切りって?」

「う~ん。はっきり言わないけど、とにかく一番になりたいらしい。…で、既に来年のコンクールに向けてスタンバイ中」

「…そうなんだ」

しみじみと聞いてると、食事を終えた杏奈が立ち上がり、

「昼からの会議の準備があるから行くね」

「あ、うん」

「ねぇ柳くん。織田さんがそんなに仕事に燃えてるなら、なかなか結婚なんてできないね」

ふふん。と意味深な笑いと共に杏奈は去っていった。

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